ひと言集

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平成17年12月14日

12月のことば

「あなたは十分に頑張りましたよ」

 認知症の母親を数年間介護してきたFさんが、母親を施設に入所させたいと思っているが、どうしたものかと相談に来られました。聡明なお母さんで、家業のかたわら子育てにも熱心でした。高齢になってからの転居、父親の他界などをきっかけに、以前の母親とすっかり変わってしまいました。と切り出して数年間の介護の大変だったことを淡々と話されました。話の中から母親への思いが伝わってきました。そして施設入所に思い切れないようすが伺えました。
 
 一通りお話を伺った後、「あなたは十分に頑張りましたよ」と声をかけると、咄嗟に「ああ、そう言ってほしかった。ありがとう」と涙ぐみました。

 家事や育児をしながら、何年も介護を続けることは並大抵なことではありません。また、介護の大変さを周囲の人に理解してもらうことはむずかしいことです。
 
 ある家族会の席で、1人の女性が落ち着き無く廊下と会場を出入りしていました。笑顔で何かつぶやいていましたが、明らかに認知症の方だとわかりました。
その方のご主人が、「妻をグループホームに入れようかと思っていますが、いまひとつ決心がつきません。どうしたものでしょう」と言いました。ご夫婦ともかなりの高齢のようでした。

「気に入ったグループホームがありましたら、お入りになる時期でしょうね」と話しました。この方もきっと長いこと介護を続けてきたことでしょう。誰にも分ってもらえないようなご苦労があったと思います。

施設に入ることは、生活の場を移すことで、ご家族との行き来は自由ですし、精神的な支援は、ご家族のかかわりが一番であることを話すと、ご家族は一応納得されます。お二方とも十分な介護をされてきましたし、すでに在宅介護の限界が来ているようでした。それでも、誰かに背を押してもらわないと、決心がつかないのがご家族です。

 今年も残すところわずかとなりました。介護家族の方、施設でケアをされている方々には、暮れもお正月もありませんね。私も40数年看護の現場で仕事をしてきましたので、皆様のこと、よく分ります。「頑張らなくていいのよ」とか「頑張らないケア」などという言葉が時折聞こえてきますが、ケアの渦中にある方々には、まるで別世界の言葉のように聞こえることでしょう。ともかく、介護者が心身とも健康でなければ、介護を続けることは困難になります。寒さが一段と増してきました。どうぞご無理をしないように、お体にお気をつけてお過ごしくださいませ。