ひと言集

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平成18年8月21日

8月のことば

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「気になるお膳」

 ある施設のサービス評価会議で、ご意見箱の中の一つに、入所者の意見として、「お膳に並べられた、ご飯と汁椀の位置が正しくないのが気になる」というのがありました。長いことこの施設に関わってきましたが、このような意見は始めてなので、一瞬驚きました。

 参加していた入所者(女性、94歳)が「ほんとに、毎回ですよ。私は気分が悪いから、きちんと直してから頂いておりますよ」と言った。「え、え、どうしてそうなってしまうのかしら」「スタッフの入れ替わりがあって、指導してくれる人がいないのでしょうか」などという意見がでました。参加者の1人(女性、40歳代?)が、「汁椀を左に置くというのは、理に叶っていると思いません?汁椀は左手に持つでしょう、右にあるものを持ってくるより、左にある方が便利ですよ」「いや、やっぱりご飯は左、汁椀は右でなければ・・・」と意見が割れました。

 施設側の話によると、「最近スタッフの採用方法が変わったことが原因の一つかもしれない」と言うことでした。以前はスタッフを採用するとき、面接の後、就職希望者全員と一緒に食事をしていたそうです。各自がお膳におかず、ご飯、汁をよそって並べて、頂くという方法をとっていたそうです。その席で、個々の就職希望者の生活習慣が見えてきたそうです。たとえば、1人暮らしをしていた人は、お膳の上の皿や椀の置き方に全く無頓着な人が多かったそうです。一方家族と暮らしていた人は、ご飯は左、汁椀は右に置いていたそうです。

 現在の高齢者が若かった頃は、何処の家庭でも、親は子供たちに食事の準備や後片付けを生活の一部として教えていました。当時は一般に和食が中心でした。ご飯は左に、汁椀は右に置くということは自然に身に付いていました。それはわが国の文化であり、食事の作法として守られてききたわけです。

 最近は世界中の国の珍しい食事を頂く機会が多くなりました。それぞれの国の文化や食事の作法があるのでしょうが、あまり重視していないように思います。ボトルのお茶を飲みながら、買ってきたお弁当を食べる1人暮らしの若者に、和食の作法のことを話しても理解してもらうのは難しいのかもしれません。

 時代と共に文化も作法も変化していくと思いますが、現在の高齢者は、お膳の中の食器の並べ方を気にします。高齢者が、「どうぞ」と勧められたお膳を見て、「あら、美味しそう」と食事に関心を持って頂くのと、「あらら、この並べ方はなんでしょう」と思いながら不自由な手で直す人、直せないので、あきらめている人もいるでしょう。一日3回、食事は高齢者が気持ちよく頂けるようにお勧めしたいものですね。

 酷暑の日が続きます。お体に気をつけてご活躍くださいませ。