ひと言集

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平成18年11月20日

11月のことば

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「仕事」

 サービスステーションのカウンターの前の椅子に掛けて、そろばんを使って計算している小柄な女性がいました。数ヶ月前に入所してきましたが、ここは職場だと思っているようです。挨拶をすると、「あんた誰?何しにきたの」大きな瞳で見つめました。訪問の理由を話すと、「あんた、元気なうちは仕事を続けるのが一番だよ」と諭すように言いました。

 若いときから経理の仕事一筋できて、定年後も経理の仕事をしていたというこの女性は、認知症が進行して1人暮らしが難しくなり、施設に来ましたが、スタッフが準備した3桁の足し算は間違いなくできるそうです。夕暮れに混乱することが時折ありますが、ほぼ穏やかに過ごしているということでした。

 現在の高齢者の多くは、仕事中心の生活をしてきました。認知症高齢者は、周囲の人が仕事の準備をしてくれなければ、何をしたらよいのか分らない。何もすることがないと周辺症状につながってしまうことがあります。

 言葉のやり取りの難しい高度の認知症の男性で、異食、暴力、興奮、他者の部屋に入り物を持ち出すなど、多彩な周辺症状がありました。ある日、スタッフと一緒にたけのこ堀りに行きました。長靴を履いてスコップで上手にたけのこを掘ったそうです。また、たけのこの堀り方をスタッフに教えてくれたそうです。その後、施設周辺の道の掃除をスタッフと始めました。仕事したことは覚えていませんでしたが、働いているときの表情はイキイキとしていました。

 仕事以外にも関わり方を考慮しました。ときおり気分の変動はありますが、次第に周辺症状が軽くなってきました。

 多忙な業務の中で、個人に出来る仕事を探し、場合によっては一緒に行うということは、大変なことです。ても、仕事をするということは、たとえ生産的なことでなくとも、「個々の高齢者の自己実現」につながります。さらに、周辺症状の予防にもなると思います。

 「仕事をしたい、役にたちたい」と思っている認知症高齢者の思いに答えるということも大切な私たちの仕事だと思います。

 一日毎に秋が深まっていきます。風邪を引きませんように、上手に休養をとってお仕事をしてください。