ひと言集

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平成19年4月26日

4月のことば

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「くすり」

 年齢と共に身体の故障が目立つようになり、病院通いが多くなりました。職業柄お年寄りにくすりを飲ませることは度々ありますが、私自身くすりは好きではありません。できれば飲まずにすませたいと思っています。

 ところが、最近6種類のくすりを飲むようになりました。4月に入って歯痛に悩まされ一時的ですが7種類になりました。さあ大変です。起床時、朝食後、昼食後、夕食後、就寝前と1日5回の服用です。白い錠剤は似たようなものが多く間違わないように緊張します。粉くすりは口の中一杯に広がって耐え難く、オブラートに包まなければ飲めません。

 何事も体験と思いますが、幾種類ものくすりを飲むことの大変さを味わっています。在宅高齢者のくすり服用順守は80%位といわれています。くすりを忘れずにきちんと服用するには、規則正しい生活をしていなければなりません。外出先で食事したときや旅先での飲み忘れがあって、100%服用の難しさを痛感しています。

 自立した生活の中の1つに、くすりを自分で正しく服用できるということがあります。1人暮らしや高齢者家族では、くすりを毎回正しく服用することはかなり難しいことです。ご家族がいても、なるべく自立を奪わないようにという思いから、何時からくすりの管理をすればよいか迷います。
 次のような相談を受けたことがあります。 

 89歳の母親が、幾種類ものくすりを自分で揃えて服用していました。介護者である娘は母親のすることにはなるべく手を出さないように心がけていました。あるとき、見守っている娘の目前で、パックから出したくすりを飲まずに、パックを飲んでしまいました。相談室に緊急の電話が入りました。飲み込んだパックは、角が尖っていて硬いものだということでした。救急車で病院に連れて行き取り出してもらうように話しました。尖ったパックが食道を傷つけ気管を傷つけたら、大変なことになるからです。

 軽度の認知症の妻(64歳)と2人暮らしをしていた几帳面なご主人は、仕事に出かけるとき昼食と夕食をそれぞれのお盆にのせ、くすりも添えておきました。妻にはご飯を食べたら飲むように何回も話していました。ご主人が帰宅するとご飯は残さず召し上がっていましたが、くすりの飲み忘れが度々ありました。
 介護支援専門員のすすめでデイサービスを紹介されましたが、1度参加したきり「私は行きたくない」と強く拒否し、自宅に1人でいることを好みました。
 しばらくの間昼のくすり服用の確認にヘルパーに短時間入ってもらうことにしました。夕食後のくすりはご主人が帰宅してから服用させることになりました。

 話は違いますが、最近受けた相談に、新設間もない施設に入所してきたお年寄りで、極度に依存的な方へどのように接すればよいかということです。この方は目覚めているときは常にスタッフを呼び、身体の調子が思わしくないことを何度も訴えます。廊下を歩いていてスタッフの姿を見かけると、その場に崩れてしまいます。何回か診察、検査を受けましたが、治療を必要とする病気はないと言われています。

 自宅で暮らしているときも、同じような状態だったのでしょうか、ご家族はくすりを飲ませて昼夜とも眠らせるようにしてほしいと希望しているそうです。施設の方針としては、くすりは飲ませないケアを目指していると言うことでした。

 お年寄りが依存的になるには複雑な理由があります。こうした方への接し方はとても難しいものです。神経精神科の専門医、心理療法士、看護師、介護士等でチームを作り定期的に話し合いをもって、対応の方法を検討する必要があります。

 くすりに頼りすぎることは好ましいことではありませんが、お年寄りの苦しみや強い不安を軽減するには、くすりが必要でしょう。ケアの力で改善というのは無理です。ケアで改善できる。それほど経験豊かで優秀なスタッフがそろっていれば別ですが、新設間もない施設では考えられません。介護の持てる力はこのようなお年寄りの前では非常に微力であるということを自覚することも必要だと思います。

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 認知症の程度や個人の背景で、1人として同じ状態の方はいません。またお年寄りはご自分を変えることができません。介護者が変わるとお年よりも変わります。柔軟で臨機応変な対応が出来ことが大切です。
 
 認知症のお年寄りが安心して穏やかな生活ができることがケアの目的の1つです。
 
 さまざまな事例を載せました。介護困難に出会ったとき、それは次へのステップのチャンスだと思います。そのようなときに参考にして頂けると嬉しいです。