ひと言集

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平成19年12月28日

12月のことば

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「赤い糸」

 男性よりも女性の方が長寿ですが、夫婦で長生きの方にも時折お目にかかります。お二人ともお元気で生活している時期はよろしいですが、どちらかが病気になると大変です。ことに夫婦2人きりですと在宅での生活が難しくなり、施設入居を選択される方もおります。施設に入居したことで、家事全般から解放されて安堵される方もおります。

 施設入居の場合、同室か別室かになりますが、入居される当事者が決める場合もありますが、ご家族の意向で決まることもあります。施設の若いスタッフの中には、「ご夫婦だから、ご一緒のお部屋で生活できるのが一番よ」と思う人もいます。結婚生活への憧れや理想があるからでしょうか。

 ご夫婦によって同室が好ましいのか一概に言えませんが、次のような例があります。要介護4の妻(88歳)は5年前に脳梗塞で倒れました。デイサービスとヘルパーを利用して在宅介護を続けてきましたが、キーパーソンの夫(92歳)が体調を崩し、先行きが不安になって2人で施設に入りました。夫は家事全般から解放されました。妻の介護は施設のスタッフに任せることができず、スタッフが訪問すると、夜間でも既にケアされていました。妻は夫の体調を心配して、スタッフのケアを望んでいました。そのことで、夫としばしば言い合いをしていました。スタッフは夫と話し合い、ご主人の体調のこともあるので、夜間はスタッフがケアをすることを約束しましたが、夜間訪問すると夫は既に起きて、妻のベッドサイドに立っていました。

 レビー小体認知症の夫(82歳)と同室で暮らしていた妻は心臓疾患がありました。穏やかな夫が、夕暮れから夜にかけて幻覚妄想状態になると、人が変わったように攻撃的になって、部屋にいられなくなることが、毎晩のように続きました。妻に別室で暮らすことを勧めましたが、夫婦はいっしょに暮すもの、という思いの強い妻は悩み苦しみました。

 94歳の夫と同室で暮らしていた認知症の妻は、夫は介護が必要なことを理解できませんでした。ことに夜間、スタッフが夫の介護に入ると、夫が女を連れ込んだと言い、夫を攻め立てました。

 ある家族が、「自宅で2人暮らしをしていた頃の両親は、喧嘩が絶えませんでしたが、こちらで生活するようになってから、人が変わったように穏やかになりました」と言いました。ご両親は隣り合わせの個室で生活をしています。夫はケアが必要ですが、妻は一切口出しをしないで、スタッフに任せています。家事と介護から解放された妻は、自分なりの趣味活動をしています。スタッフは必要に応じてご主人の様子を妻に伝えています。

 100歳の夫が認知症の妻(99歳)の車椅子を押して施設内を散歩している姿をよく見かけました。2人は同じフロアですが、別々の4人部屋で生活をしていました。日中は夫が妻を尋ね、一緒に居る時間を作っていました。身体ケアと生活支援は全てスタッフに任せていました。

 ある家族会の席で、自宅の近くなら1人で出かけても、帰宅できていた認知症の夫が、道に迷って警察に保護された。という話を聞いたので、「連絡先を書いたものを、お互いのポケットに入れておく」ことを勧めました。妻が「どこかに捨ててしまいますよ」と言うので、「赤い糸で結んでおくのよ。あなたたち、赤い糸で結ばれているんでしょう」というと、「赤い糸、そんなもの切りたいよ!」ときつい言葉が戻ってきました。近くにいた家族が、「演技で行こうよ、役者になってね」とサポートしてくれました。この方は、不安の強い夫といつも手をつないで歩いている方です。