ひと言集

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平成20年2月18日

2月のことば

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「ショックなできごと」

 気のおけない数人の友人と、昼食をしていたときのことです。「私、早く死にたい」と突然Aさんが言いました。「え、え、なんで?」と皆が一斉に、Aさんを見ました。「ご主人置いて先に死にたいって、何かあったの?」

 「実はね、私ボランテアで老人施設に行ったのよ。そこで、驚いてしまったわ。自分の意思では何もできない老人が大勢いたのよ。私、あそこまで生きていたくないわ。何にもできない自分なんて考えられないけれど・・・、よく考えてみたら、あれもこれもできないことが増えているのよね。ああなる前に、死にたいわ」と深刻な表情で話しました。

 主婦のAさんが、70歳を過ぎて、はじめて体験した虚弱な高齢者の集団に圧倒され、自分の老いと重ねて、大きなショックを受けたのだと思いました。

 「そういえば、ほんとにできないことが多くなったわね。若い時には考えてもみなかったわ」

 「そうね、仕方がないんじゃないの、だからといって、すぐ死にたいというのも突飛ね」

 「ぽっくり死ねたらいいとは思っているけれどね」と、60歳代の1人を除けば全員70歳代の人たちの意見でした。

 「五島さんは、どう思う?」黙って聞いていた私に矛先が向いてきました。

 「そうね、私は仕事でお年寄りと出会っているから、少し考え方が違うのよね。勿論『ぽっくり願望』はありますよ。でも、できないことは考えない主義なの、だってできることが一杯あるんですもの、こうして皆さんと、美味しい食事が頂けるし、話す、笑う、遊びにも行けるでしょう。できることって、まだまだ一杯あるじゃないの。施設で生活している方々の中にも、何か小さなことでもできることがあるのよ」

 「この人って、どうしてそう前向きに考えることができるのよ!」

 「だって、明日のことを思いわずらっても仕方ないでしょう。今が楽しく幸せならいいでしょう」

 「まあ、そういうことね」なんとなく一同納得してしまったようでした。

 「ねえ、私レースの付いた“ブラウス”がほしいのよ。スカートも作ろうかしら」Aさんが突然話題を変えました。

 「いいんじゃない、似合うわ、あなた100歳まで生きるわよ」と、大笑い。いつもの屈託のない明るいグループに戻りました。

 「ねえ、ここのお店の“あんみつ”は凄く美味しいのよ。席を替えて頂きましょうか」言いだしたのは、Aさんでした。