ひと言集

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平成20年7月30日

7月のことば

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「老い支度」
 
 2年前から、年3回の認知症家族会に、毎回参加される80代後半のご夫婦がいます。お二人とも認知症ではありませんが、高齢になったので、いろいろ勉強をしたい。ということが参加目的でした。

 家族の会では毎回在宅介護の大変さや介護保険のこと、施設の情報など、家族が積極的に話し合っています。解決の糸口が見つかる場合もありますが、難しいこともあります。

 「グループホームに入居させたが、家であれほど家族を困らせたのだから、施設でもみなさんに迷惑をかけているに違いないと思うと、少しも安堵できない。在宅介護も地獄だが、施設に入れても地獄ですよ」などという話になります。

 ご夫婦は、こうした話に耳を傾けて聞いていました。いつも時間いっぱい話が盛り上がり、ご夫婦への関心は薄れていきました。

 今回参加者が少なかったこともあって、ご夫婦の意見を伺いました。「いやあ、勉強になりますよ。いずれこの人が倒れたら私が看てやろうと思っています」と温厚そうなご主人が隣の奥さんに目をやりました。「何言ってるのよ。心臓発作を起こして4回も救急車で病院に連れて行ったのは私よ」笑顔で奥さんがやりかえしました。参加者一同お二人を見て笑いました。和やかな空気が流れました。

 ご主人は自宅で仕事(研究)をしているそうです。奥さんは囲碁が趣味で、地域の人と囲碁を楽しんでいるそうです。「時折私が指導しています」とやさしい笑顔で奥さんの方を見ました。「難しい手を教えてくれますのよ」奥さんも、うれしそうに笑顔で答え、「母は私たちのことを『バカ夫婦』と言っていましたのよ」と付け加えました。お互いを尊重しながら、屈託のない生活をしてきた様子が伺えました。

 「私たちは子供がいませんから、どちらかが病気になったとき、介護保険のサービスが必要ですが、介護保険外のサービスのことなども知ることができ、ほっとしています」と言いました。

 会場を出たお二人は手をつないで、バスの停留所に向かっていました。「いつまでもお元気で、お幸せに」と祈りました。