ひと言集

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平成20年8月20日

8月のことば

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「私の8月」

 「すいとん」は、若い人たちには馴染みがないと思いますが、私が育った頃は、どこの家庭でも馴染みのある食べ物でした。地域によって材料や作り方、また呼び方も違っていたかもしれませんが、栃木県では「つめりっこ」などと呼んでいました。

 育ち盛りのこどもが多く、いつもお腹を空かしていました。母がお櫃のふたを開けて、「少し足りないかな」と首を傾げている姿をよく見かけました。そんな日は決まって食卓に「すいとん」がでました。庭先にある季節の野菜がたっぷり入った中に、歯ごたえのある俵型の「すいとん」が入っていました。いつも兄妹で賑やかに食事をしていました。

 当時の地方の生活は、冷蔵庫もジャーも何もない時代でしたし、出来合いのおかずも売っていませんでしたから、何でも母が作りました。そういえば、お祭りなどの行事以外は、母と食卓を囲んだ思い出は意外と少なかったような気がします。母はこども達がお腹一杯食べて、満足した後に残り物を食べていたのでしょうか。

 「すいとん」はその後も長い間親しみのある食べ物でした。戦争中、また戦争が終わってからも、長いこと食糧難の時代が続きました。配給制度があって、自由に手に入るものは何もありませんでした。ことに食料は乏しく、国民のほとんどが飢餓状態でした。

 高度成長期に入って、“消費は文化だ“といわれる時代が来ました。お金があれば何でも手に入る時代になって、「すいとん」は人々から忘れ去られていきました。

 8月になると、「すいとん」を作るのが我が家の習慣となりました。夏野菜に魚介類と海草を入れて作った「すいとん」は格別です。