ひと言集

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平成21年5月25日

5月のことば

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「残された機能」

 「早くお迎えが来ないかしら」ともらす高齢の方に時折お目にかかります。
92歳のAさんは30年前に夫を見送りました。その後、多趣味なAさんは多くの友人と生き生きとした日々を送ってきました。そんなAさんが脳卒中を起こし1人の生活が困難になって施設に入ってきました。事情があるのか2人いる娘の面会はめったにありません。左半身に麻痺のあるAさんは生活の多くを介護に頼らなければなりません。一瞬にして生活の自立を失ったことや娘たちから捨てられたと思っているAさんは生きていても仕方がないと思うようになってしまいました。

 スタッフがさまざまなアクティビティに誘っても「できない」といって参加しませんでした。日中は車椅子で過ごしていましたが、他者との交流も殆んどありませんでした。

 何に誘っても「できない、やりたくない」という返事が戻ってくるし、二言目には「生きていても仕方がない」というAさんになんの働きかけもできないスタッフは、自分たちの力のなさに悩んで相談に来ました。

 Aさんの最近の生活の様子のなかで、車椅子で花見に連れ出した時、「一句詠んでくださった」という。その句を色紙に書いてAさんのベッドサイドに貼ったという。「素晴らしい、それからAさんはどうなりましたか」「つい2・3日前に庭にお連れしたときは、新緑を眺めて一句詠みました」Aさんはお元気な頃、句会などにも参加して雑誌に投稿されていたそうです。

 身体面の障害により生活の自立を失ったAさんに残された機能、それは俳句を詠むことでした。「あれもできない、これもできない」とできないことばかり数えていたAさんに、できることを数える方向に支援することがケアする側の役割だと思います。

 ここの生活の中で俳句を作ることでAさんの気持ちが少しでも前向きになると思います。Aさんへの適切な働きかけは既に始まっています。自信を持ってじっくりとかかわっていき諦めないことが大切ですね。