ひと言集

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平成21年6月24日

6月のことば

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「ベッドとタタミ」

 30年も前のことである。「家の姑を年寄りだと思って馬鹿にしないでください」と怒鳴り込んできたお嫁さんがいた。ゆっくり話しを伺うと「家では絹の布団を2枚敷いて休ませていたのに、ここでは薄いしかも硬いマットレスに寝かされてあんまりです。隣の方とどうして差別するんですか」ということだった。

 当時はスプリングが入った約20センチの厚みのあるマットレスが使われていた。ベッドも電動のものは少なく高さも一定のものだった。高齢の方はなれないベッドの上がり降りに苦労した。何よりもスプリングのベッドの端に腰をかけたときすべり落ちる危険があった。そこで高齢な方にはパームマットレスを使用していた。

 病室の入り口に立って眺めると、ベッドの低さが目立ち貧弱であった。差別感を覚えるのはもっともなことであると思った。

 施設や病院に行くとやはりベッドのことが気になる。ある有料老人ホームのモデルルームを見に行った。シックな調度品にセミダブルの豪華なベッド、窓からの景色も最高だった。半年ほどしてその部屋に入所された方がベッドから落ちて骨折したという話があった。

 その方は入居される前に見学に来た時その豪華なベッドが大変気に入って同じものを購入した。ところが入所して間もなくそのベッドから落ちてしまったということだった。退院後訪問すると部屋の隅に介護用ベッドがちんまりと置かれていた。豪華な部屋と不似合いだった。

 ある新設の認知症治療専門病院を訪問した。大半がベッドの部屋だったが幾つかタタミの部屋があった。4畳半位の部屋で休んでいる方もいたが我が家の和室という感じだった。

 タタミの生活をしていた方がベッドの生活に慣れるには多少時間がかかる。ことに認知症の人は目覚めた時タタミと思ってベッドの上に立ち上がり転落することがある。

 管理上ベッドの方が良いと言うこともあろうが、個人の希望やその人の状態に合った部屋としてタタミの部屋も良いなと思った。