ひと言集

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平成21年12月17日

12月のことば

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「ことば」

 相手の一言で元気をもらった。安心した。という経験は誰でもあると思う。またその反対のこともある。認知症の人を介護している家族の中には、「認知症であることに早く気づいてあげなかったこと」「病気と分かっていても同じことを何回も聞かれたりしてイライラしたり怒ったりしたこと」などで自責的になる人が多い。ことに在宅介護の限界がきて施設に入所させたりすると、ますます自責的になる。以前にも書いたが「家で介護していた時は地獄だったが、施設に入所させてからも地獄ですよ」と言った家族の言葉が忘れられない。

 90歳を超えた母親をグループホームに入所させてからも、毎回家族会に参加していたAさん(息子)の言葉である。そのAさんが「母親がグループホームで穏やかに息を引きとった」と家族会で報告した。「いやあ、女房がお袋の後を追うように亡くなりましてね」と付け加えた。参加者一同言葉を失った。

 Aさんは奥様のことを話題にしたことはなかった。話によると長いこと人工透析をしていたという。体調が悪いのに姑の見舞いに度々行っていたという。「今は何をどうすればよいのか分からないですよ」と肩を落とした。別れ際に「次回の家族会にも是非来て下さい、みんなお待ちしてますよ」と伝えた。

 母親の在宅介護が限界になって施設に入所させたBさん(娘)は、面会に来て母親に会うとかえって不安になってしまうと話した。入所当初から見ると僅かだが病状が進んでいる。穏やかで上品な母親はいつもにこやかな笑顔でフロア内を歩いていた。時にはお気に入りの椅子に座って過ごしていた。

 家族の「不安になる」気持ちは理解できる。一緒に暮らしていた時は大変であっても、いつも目の届くところで生活のすべてが見えていた。ところが面会では生活全般が見えない。スタッフに尋ねても毎回安心を得るような言葉が戻ってくるとは限らない。

 施設入所は家族の手からスタッフの手へ移ることになるし、面会は点でしかない。家族が不安になるのは当然である。ある時期は家族と交換日記をするのも一つの方法であろう。何よりも家族とのコミュニケーションが大切である。入所者に対してはいつも優しい心配りをしているが、家族にも優しい心配りを忘れないようにしたいものである。言葉一つで家族は安心し、次回の面会を楽しみにするようになると思う。

 Bさんはある時スタッフに「娘さんを見るお母さんのお顔はとても嬉しそうですよ。普段はあのようなお顔はしません」と言われてほっとしたと語った。