ひと言集

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平成22年2月16日

2月のことば

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「環境への配慮」

 認知症の人が行動・心理症状をおこす要因の一つに環境があります。家族やケアスタッフには理解できないような場面に出会うことがあります。

 ある家族の相談です。認知症のご主人と外出先でエレベータに乗ろうとして待っていました。エレベーターが止まってドアが開いた時、中から降りる人がサット出てきました。途端にご主人が「わー」と大声をあげて怒り出したと言うことです。またレストランで食事をしていた時、数人の学生が大きな声で談笑している場面に出会うと、学生の所に行き怒鳴り散らしたそうです。

 ご主人はエレベーターから人が出てくることは予想できなかったので混乱したものと思います。エレベーターを待つときは入り口の端にご主人を置き、降りる人とできるだけ接触しないようにしてみるように話しました。

 認知症の人は周囲の状況が理解できなくなります。目の前で起きていることも理解できませんので、その場の状況を認知症の人が納得できるように、身近な人が常に伝えていくことが必要になります。不特定多数の人が集まるレストランでの食事は難しい人もいます。外食は行きなれたレストランにして、店の人にも状態を話しておき、何か起きたときは協力してもらうとよいでしょう。また、比較的空いている時間帯にする。場合によっては個室などを利用するとよいでしょう。

 「いじめ」はどこの世界にもあります。認知症の人の中にもご自分のことはさておき、他人のことが気になり罵声を浴びせる人がいます。同じ食卓に混乱していて食事が思うように食べられないAさんがいました。じっとその人を見ていた認知症のBさんが小声だが罵声を浴びせ続けていました。Aさんにスタッフが食事介助を始めると、Bさんが口の中の食べかけの食物をAさんに投げつけました。

 施設での食事の席はなんとなく決まっていて、変えるのが難しいという話はよく聞きます。しかし、いじめられる側のストレスを思えば席替えすることを検討した方がよいでしょう。席替えは、入居者と話し合って納得してもらい、定期的に行なう方法やイベントの度に変える方法もよいでしょう。混乱が激しい時期は目の前に人がいない席がよいこともあります。食事の時は和やかに楽しくというスタッフの思い通りにはいかないこともあります。

 同じドアが並んでいる施設で起こることの一つに居室間違いがあります。激しい徘徊のあるSさんは入り口に名前を書いて知らせてますが、隣のCさん部屋に入ってしまいます。Cさんは半身に麻痺があり車椅子の生活です。言葉も思うようにでません。Sさんが入ってくると何をされるのか恐がります。同室の夫がSさんに「出て行け」と怒鳴ります。スタッフは何時もSさんの行動に気を配っていますが、同じようなことが繰り返されています。

 入居者の皆さんが安心して暮らすことができるように配慮するのがスタッフの役割であることは自覚していますが、なかなかよい案が浮かびません。消防法に触れるようなことはできません。そこでSさんの行動が落ち着くまで、Cさんご夫婦と相談して、部屋のドアの外側の上に突っ張り棒を付けてカーテンを下げ、ドアの取っ手の反対側からカーテンが開く方法を取ってみるように提案してみました。Sさんが部屋を間違えることがなくなりCさんが安心して暮らすことができることを願っています。

 認知症の人は環境の変化に適応しようと一生懸命に生きていますが、間違いや混乱しやすい状況にあります。安全に安心して暮らすことができるためには、周囲の人の生活環境への細やかな配慮が欠かせません。