ひと言集

文字サイズ:

画像の説明

平成22年5月27日

5月のことば

画像の説明

「“なぜ”そうするの?」

 右半身に多少の麻痺があり、言語障害があるため思うように意思表示ができない脳血管性認知症のAさんの暴力に困っている。という相談を受けた。いつ、どのような時に暴力が起こるのか尋ねたら、次のような例を話してくれた。

 ある時Aさんが認知症の人の車椅子を押しているのを見たスタッフが、思わず「やめてください、危ないでしょう」と言うと、いきなりAさんの拳骨がスタッフに飛んできた。「Aさんって時々かっとなるんです。私も悪かったと思いますがAさんに近づくのが恐くて」ということだった。同席していた他のスタッフたちに「“なぜ” Aさんが暴力を振るったのかしら」と問いかけたが誰も何も言わなかった。その雰囲気からスタッフの多くがAさんにあまりよい感情を抱いていないのではないかと思われた。

 「Aさん有り難う、私がかわります」と言ったら状況は違っていたのではないか。良かれと思って、あるいは親切に車椅子を押していたAさんの行動に対して「やめて、危ないでしょう」という言葉かけがAさんの自尊心をひどく傷つけたのではないか。スタッフ側の感情を入居者は言葉では言えなくとも分かっている。まるで鏡のようである。否定的な言葉には相手を非難する感情が必ず伴うものである。相手を心から尊敬し温かい言葉かけ、感謝をこめた声かけが認知症の人へのケアでは大切である。

 認知症の夫が家族に付きまとって「どうすればいいんだ、どうすればいいんだ」と何回も聞くので、こちらも何のことか分からないので、つい「何をどうするのよ!」ときつく返していた頃は、夫は凄く怒ったが、最近「それでいいのよ」と言うようにしたら、「そうか」と怒らなくなった、と話してくれた。

 認知症の人はそれなりに一生懸命生きていることを理解してその時々にあった対応ができるようにしたい。そして何よりも自尊心を傷つけないことである。