ひと言集

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平成22年11月16日

11月のことば

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「最後の花道」

 M市最高齢者のAさんは、ナースに付き添われて短時間敬老祝賀会に参加した。市長と握手をし、大勢の参加者の祝福を受けた。翌日の夜Aさんは静かに息を引き取った。

 「ふりかえり」のカンファレンスの中で「祝賀会に出なければもう少し長生きできたのではないか」「綺麗な着物に着替えて祝賀会に参加し、写真を撮っことはよかった」などの意見が出た。

 106歳のAさんは夫を見送り、兄妹や身近な人にも先立たれた。姪たちはいるが疎遠になっていた。長いこと独居生活をしていたが、加齢に伴い介護が必要になった。24時間住み込みのヘルパーのケアを受けて暮らしていたが、101歳の時にヘルパーの費用の都合がつかなくなって施設に入所した。

 入所当初は帰宅欲求が強く不穏状態が続いた。おぼつかない足取りで歩き廻った。その後転倒骨折入院、そして車椅子の生活になった。その後も腹痛、嘔吐、発熱などが起こり検査の結果、腹部内にいくつもの病気があることが解った。

 Aさんは穏やかな時を過ごすこともあったが、大声で叫ぶ、いざるなど不穏状態が昼夜関係なく続いた。食事や水分が摂れない、肺炎を起こすなどで生死をさまよう時を繰り返した。

 始終目の届くサービスステーションの前の部屋に移しスタッフはできる限り頻回にかかわった。

 Aさんの表情は次第に穏やかになり笑顔を見せることもあった。担当のEスタッフが「最後は私が看取る」ことをAさんに伝えていた。Eさんが夜勤の時にAさんは息を引き取った。

 身寄りのないAさん。いろいろなことがあったが、スタッフにとってAさんはかけがえのないいとおしい人になっていた。スタッフの思いを聴いて、看取りのケアに後悔はつきものだが、「祝賀会への参加はAさんにとって最後の花道だったと思うし、最後を飾るのにふさわしいできごとだと思う」と伝え素晴らしいケアであったと讃えた。