ひと言集

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平成23年1月6日

1月のことば

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「身体拘束ゼロを願う」

 新春のお喜びを申し上げます

 介護に休日はありません。お正月でも休みなく介護に明け暮れていらっしゃる方々へのねぎらいの言葉をおおくりいたします。

 「身体拘束ゼロへの手引き」が厚生労働省から出て10年になります。改めて当時のことを思い出しました。当時は車椅子に座った高齢者の多くが抑制帯をかけられていました。それ以前に抑制衣を着せた高齢者がテレビで放映されたこともあります。

 拘束ゼロ作戦にあたって施設のスタッフは揺れ動きました。ある施設で1人ずつ抑制を外していきました。結果何事も起こりませんでした。むしろトイレ誘導時に抑制帯を外したり付けたりする手間がなくなりました。何よりも高齢者の表情が明るくなり、スタッフも生きいきとした表情に変わりました。

 私が開設にかかわった施設のスタッフから連絡が入りました。「開設当初無かった抑制帯がいつの間にかたくさん増えて、抑制することが当たり前になってきた」ということでした。1人ずつ外した施設のことを伝えると早速実行して成功しました。

 やはり開設にかかわった認知症治療病棟がありました。管理者もスタッフも抑制のことは全く念頭にありませんでした。そこでは行動・心理症状の原因を探求し改善の方向に持っていく工夫を医師をはじめとしたチームで検討し改善の方向に努力したため、拘束の必要は全くありませんでした。

 その後事情があって当初のスタッフが一新しました。現在その病棟は抑制が当然のように行われるようになっています。

 「福祉は人なり」という言葉がありますが、福祉だけでなく病気や障害のために何らかの支援を必要になった人々のケアにあたる立場の人に当てはまる言葉です。安全という名のもとに、ケアする側の思い通りにならない高齢者を拘束するということはあってならないと思います。

 最近入院中の知人(86歳の女性)を見舞いに行きました。家族からの情報では、口から食事が摂れない状態が続いているためA病院に入院してIVHを行っていたが、長期になるので注射部位を変えて在宅介護になったということでした。介護する側も若くはないので過労になり現在の病院に再度入院になりました。

 軽い認知症もあるようでしたが、話のやりとりはできました。両手は肘を曲げベッド柵にがっちりと結わえられていました。娘が面会に来ていたので、「病院のスタッフと相談して面会の時だけでも片手ずつ抑制帯をはずして腕のマッサージできないかしら」と話したら、「母の肘の関節は固まっていて動かないんです」という言葉が戻ってきました。

 数日後ある施設を訪問したときのことです。肺炎で入院して回復が遅れ、3か月目に退院になった入居者のFさんを訪問しました。両肘を固く曲げた姿勢でベッド上にいたので、手に触ってみたところ両肘とも固く曲がったまま動かない状態でした。1年前に入居したFさんはフロアをよく歩き、食事も自分で召し上がっていました。「そうなんです。入院中抑制されていたものですから・・・」とスタッフは残念がりました。

 医療の場では命にかかわるような状態の時には抑制が行われると思いますが、回復後関節が動かなくならないような抑制をしてほしいとつくづく思いました。

 長時間同じ姿勢の身体拘束は拷問ではないでしょうか。
 拘束の心身に及ぼす弊害、社会的な弊害を考えると、新しい年の初めに改めて「身体拘束ゼロ」を念願したいものです。