ひと言集

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平成23年3月16日

3月のことば

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「笑顔が戻った」

 2年前に入所した重度認知症のFさん(72歳女性)は、当初からコミュニケーションがとりにくかった。機嫌は波があったが比較的穏やかで時には笑顔も見られた。他の入居者とのトラブルもなく穏やかに過ごしていた。

 1年を経過した頃からスタッフのケアへの抵抗が始まり、次第に激しい暴力をふるうようになった。同時にデイルームで大声を上げる、大きな物音を立てる、他人の部屋に入るなどの行動が始まった。きっかけも理由もわからなかった。

 他の入居者への配慮もあり、医師の指示を受けて薬を投与することになった。状態は落ち着いたが薬の副作用で傾眠がちとなりADLもさらに低下した。医師と相談して薬を調整してもらうと同時にスタッフ間で話し合い幾つかの事を決めた。その一つに、Fさんが目覚めている間はスタッフが1人Fさんの部屋で見守りをすることにした。Fさんの状態は徐々に改善していった。

 2か月を過ぎてFさんの入居しているフロアを訪問した。数人の入居者がスタッフと輪になって歌を歌っていた。Fさんもいた。歌っている。スタッフが「案山子の歌を歌いましょう。案山子って知っていますか」と問いかけたので、私が立って案山子の真似をするとFさんが声をあげて笑った。今までに見たこともないほど嬉しげな表情だった。入所当初よりもはるかに状態が改善しているように見えた。