ひと言集

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平成23年6月21日

6月のことば

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「高齢者の尊厳を守る」

 整形外科の待合室に、高齢の男性が施設のスタッフらしい女性に付き添われて入ってきた。おぼつかない足取りで奥の席へ移動した。その時周囲の人が一斉に眉を寄せて男性を見た。強い尿臭があたり一面に漂った。

 紙おむつが出回る前の施設は尿臭との戦いだった。尿臭に加えてあらゆる生活臭に悩まされた。脱臭機もなかったので、スタッフは度々窓を開けて換気を行っていた。施設によってはお香を焚くなどの工夫をしていたところもあった。

 現代は空調の完備や脱臭機などに加えて臭いの漏れない紙おむつの使用によって、施設内の異臭はほとんどない。

 先の男性は尿が漏れるのでスタッフが紙おむつの使用を勧めたが「漏れていない」と言って使用しないのではないか、と思った。

 以前の話だが、友人の夫が前立腺に病気があって尿漏れがあった。電車で通勤していたが、帰宅したとき毎回ズボンの前が尿で汚れていた。友人が男性用の紙おむつを勧めたが「漏れていない」と頑として認めないので困っていたことがあった。

 男性とは限らず女性の中にも尿が漏れていることを認めず「漏れていない」と否定しておむつを使用したがらない人がいる。尿が漏れているという感覚がない場合や臭覚に障害があって臭いを感じない人もいると思うが・・・

 入所している女性の中で尿漏れを認めずフロア全体に臭いが漂って苦慮したとき、数人の女性を対象に「高齢女性の体の変化」について話し、尿漏れは起こりやすい状態だが臭いが漏れない、他人に気づかれない等という利点があるということで紙おむつを勧めたことがあった。

 参加者は紙おむつを手に取って「便利なものがあるね、一つもらっておこうか」と持ち帰った。そのことを機に女性は紙おむつを使用するようになった。

 下の世話になりたくない「ぽっくり願望」は高齢者の願いであろう。しかし現実にはおむつを全く使用しないで済む高齢者は少ないだろう。日常的に尿漏れの予防や漏れた時の対応、おむつに対する知識など話し合える体制が必要と思う。それは「高齢者の尊厳を守る」ことにつながることになるからである。