ひと言集

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平成23年12月12日

12月のことば

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「カニサボテンの花」

 90歳になったAさんを訪問すると笑顔で「花が咲きましたのよ」と窓辺の鉢を指し示した。ピンクのカニサボテンの花が鉢からこぼれるほど咲いていた。

 5年前施設に入所したときに持ってきた鉢の一つだという。ベランダの隅に置いていたが一度も花を咲かせたことがなかったのであきらめていた。大分前のことだが葉が生い茂り鉢から垂れ下がったので、短く刈りそろえそのまま忘れていたそうだ。

 ふと気づいたら蕾を沢山つけていたという。長年住み慣れた家から離れるときに持ってきた鉢にはきっとAさんの思い出が一杯つまっているのでしょう。優しい笑顔で花を愛でるAさんの姿が印象的だった。

 幸せな娘時代と結婚生活、子育てが終わってからのボランティア活動、趣味活動などAさんのプライドは満たされていた。しかし、年を重ねるごとに失われることが多く、歩くことも思い通りにいかない生活の中で生きる意味を失い自己否定につながっていった。

 自ら望んで入所した施設の生活であるが、少しずつ行動範囲も狭まり社会との関係が薄れていった。尋ねる人も無いなかで他の入所者と比較するようになっていた。

 月1回の訪問でAさんの話を聴いた。知的なAさんは話しながら自らを見つめ直しているようだった。「なるようにしかなりませんよね」「丈夫な体を与えてくれた両親に感謝しています」「人は人、自分は自分ですよね」「ここにいて幸せです」などという言葉が最近よく聞かれるようになった。

 カニサボテンの花がAさんに生きる望みと喜びを与えることを願っている。