ひと言集

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平成24年6月14日

6月のことば

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「脱水の予防」

 過日病院に受診に行った時のことである。待合室は診察を待つ患者であふれていた。何とも暑苦しく耐え難い気分で扇子を持ってこなかったことを後悔した。扇子の代わりになる物はないか考えたが何もないことに気づいた。

 梅雨に入った窓の外は雲が垂れ込めて今にも雨が落ちてきそうだった。それにしてもほんの少し窓が開けば少しは風が入り、この暑苦しさが軽くなるのではないかと思った。

 細長い待合室の突き当りにある窓は開かないように作られていた。この病院ができたのは10年くらい前だろうか、その頃はどこでも電気は使い放題という時代だったので、季節や天候と関係なく温度も湿度も過ごしやすいように調整されていた。節電の時代がやってくることなど誰も想像しなかった。窓は密閉されていた方が効率が良かった。

 病院だけではない。立派な建造物、乗り物など大きな眺めの良い窓ガラスの多くは誰もが自由に開閉できない仕組みになっている。

 1人暮らしの80歳の母親(Aさん)から娘のところへ現実に無いような電話が時折かかってきた。そのことを母親に尋ねると「そのようなことは言ってない」と電話したことを全く覚えていなかった。同じようなことが何回かあったので、娘は認知症の始まりかと思い診断に連れて行った。検査の結果認知症は否定された。娘は「あれは何だったのか不安だ」と訴えた。

 Aさんは高血圧の薬を長い間服用していた。血圧は安定していて年齢からするとお元気な方である。「体はどこも悪くない」という。「私は言ってないのに、娘は言ったというのよね」と不思議そうな表情をしていた。

 1日に水分をどの位飲んでいるか尋ねると、食事の時のおつゆとお茶、それに朝の薬を飲むときの水少々位、一人で居るときはほとんど水分を摂らないという。商売をしていたので使用人や客にはお茶を勧めたが自分ではめったに飲まなかった。水分を摂るという習慣がなかったということだった。外見は脱水があるようには観察されなかったが、慢性の脱水があるのではないかと疑った。

 排尿は1日5回位で夜は1回もトイレに行かないという。娘からの情報では、働き者で店の仕事以外にも縫物など手先の仕事を好んでしていたが、最近は何もしたがらない。ぼんやりしていることが多くなったという。

 水分を摂ることの必要性を話し、1日に500mlのボトルを2本以上飲むように話すと「そんなに飲めるかしら」と言っていた。ともかく水分を十分に摂って経過を見ることにした。

 4日後に訪問して水分を摂っているか尋ねると、この湯呑にこのくらいまで5杯(約500ml)飲んでいると言った。5杯では足りない、1日に10杯以上飲んでくださいと伝えると、驚いた表情をした。

 長い間の習慣を簡単に変えることは難しい。これからの季節に向けて身近な人の細やかなサポートが必要であろう。