ひと言集

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平成24年11月20日

11月のことば

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「寄り添うことって難しい」

 95歳のAさんは4か月前に長年連れ添った夫に先立たれた。以前から口数が少なくうつ傾向だったが、食事以外は自室で臥床していることが多くなった。移動はシルバーカーを利用してトイレや洗面、着替えなどは一人で行っていた。夫の死後腰痛や胸の苦しさ頻尿など身体面の不調を訴えることが多くなった。また度々ナースコールを押した。スタッフが訪問して声をかけるが目を閉じたまま返答をしなかったので、スタッフが戻り仕事をしていると再度ナースコールが鳴った。こうした行動はAさんが目覚めている間中続いた。ことに早朝と夕方から夜にかけて頻回だった。

 Aさんには子供がいなかった。唯一残っていた弟も夫が亡くなった後間もなく逝かれた。Aさんが高齢なこともあって親しい人はほとんどいなくなっていたので、面会に来る人もいなかった。

 スタッフはAさんの不安や寂しい気持ちを察して寄り添おうとしたが、ほとんど話をしないAさんとの交流は難しかった。週1回30分ほどAさんを訪問し、声掛けをしながら洗濯物を引き出しに仕舞ったり、室内を片付けたりした。スタッフの一方的な話しかけでAさんからの言葉はほとんど聞かれなかった。

 その後室内を片付ける目的で訪問するのではなく、お茶を持って訪問し、ベッドサイドでご一緒にお茶を頂く時間をもった。Aさんは自ら語ることは稀だったが、2~3か月後からAさんの朝夕のナースコールは少なくなってきた。

 常時人手不足で特定の人のために時間を作るのは難しいことであるが、Aさんのような身寄りの少なくなった最高齢者に対し、どう対応するかは各職場で話し合い実行していきたい。年代の差があまりにも大きくどのように声掛けをしたらよいか迷う時は、その方の生きてきた時代の写真や雑誌など、話題の材料になるものを活用する。またはその方の好みの花や季節の果物などを通して話題を広げるのもよい。大切な人を失ったAさんの寂しい気持ちが癒えるのにはかなりの時間が必要である。スタッフの対応によっては「私も早く死にたい」という気持ちに追いやってしまうかもしれない。今回のことでスタッフは大きく成長したと思う。