ひと言集

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平成24年12月10日

12月のことば

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「介護者が変わる」

 「認知症の人を変えようと思っても無理ですよ。介護者が変わることです。こちらが変われば認知症の方も変わります」ということを一貫して述べてきたが、介護者が変わるということは大変難しいことである。

 長いこと施設でケアの実践に携わった後、ケアマネージャとして活躍しているBさんは、ケアの場に立つと柔軟で臨機応変な仕事ぶりで入居者やご家族から信頼を得ていた。仕事大好きなBさんは子育ても終わり仕事中心に頑張れると思っていた矢先に実母が認知症と診断された。早期に気づいたので治療を受けながら当分自宅で暮らせそうだと思っているが、母親と向き合っていると何かに付けてイライラする。つい一言二言苦言が多くなる。「認知症ケアのベテランだ」と自負しているBさんだが「家族となるとホントに難しいと実感し、仕事の時の自分との違いに戸惑い自分を責めてしまう」と語った。

 家族会の席で近況報告が始まった。N氏は60歳代の妻の介護を始めて4年目になる。子どもたちはいるが定年を迎えたN氏は「妻の介護は自分がする」と決めていた。主婦として家事、子育て、近所付き合いと何でもこなしてきた妻だが、何回も同じことを言ったり、簡単な家事を間違えたりした。注意しても出来ない妻に腹が立ち怒鳴りつけてしまった。認知症のために日常生活が困難になってくるということは理解しているが自分を抑えることができないという。

 参加者は「そうよね。ほんと、わかっているけれど腹が立つのよね」「そうなったらもう同じ空気を吸うのもいや」などという言葉が出た。デイサービスなどを利用していても介護は家族の肩に重くのしかかっている。そしてやがて心身の不調につながってしまうことを一番恐れているのは介護家族である。

 N氏は腹が立ってどうにもならない時は、夜中に人の居ない河原に出て「わー」と大声を挙げると言った。「この寒いのに脳の血管でも切れたらどうするの」と参加者に諭された。その後N氏は家族同志で打ち合わせ、妻同伴でカラオケに出かけたり、時には近くの温泉に行き、また男性介護者の集いに参加したりして1年が過ぎた。

 最近の家族会の近況報告で控えめのN氏が云った「自分が怒らなければ女房は機嫌がよいので、怒らないことに決めたんですよ」と・・・

 「ようそこまできましたね」感嘆の声が上がった。N氏は泣いた。参加者も泣いた。そして「人間って変れるものだ」ということの認識を新たにした。