ひと言集

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平成25年10月16日

10月のことば

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「それぞれの人の終末ケア」

 入居して5年目のSさん(105歳・女性)は今年の夏食欲がなくなり、食事を口に運んでもすべて吐き出してしまい体重が極端に減少した。ご家族も介護スタッフもこの夏を越すのは難しいのではないかと思っていた。一口でもよいから口から食事を摂ってほしいと工夫をしたところ、高カロリー食のシャーベットを1日5回、800キロカロリーを摂取できるようになった。一時期は訪問して声掛けをしてもほとんど反応を示さなかったSさんだったが、最近はスタッフが訪問すると「ありがとう。早くお帰りよ」などと声をかけてくれるようになった。

 Bさん(101歳・女性)は78歳の娘と暮らしていたが、娘が倒れ車椅子の生活になったため、Bさんと在宅で暮らすのが難しくなり施設に入居となった。Bさんも車椅子の生活だがほぼ自力でトイレに行くことが出来るし、必要な時にはナースコールを押してくれる。入居という急激な環境の変化にも混乱することなくそれなりに適応している。

 Tさん(94歳・女性)は定年退職後施設のボランティア活動をしていたが、10年前に自宅で転倒し大腿骨頸部骨折をして杖歩行となった。その後もしばらくボランティアを続けていたが、一人暮らしが困難になったため施設に入居した。入居後も出来る範囲のボランティア活動を行っていたが、一年ほど前に肺炎になり入院した。退院後ボランティア活動は難しくなり、ベッド上で過ごすことが多くなった。一時期排泄の世話を受け入れてくれない時期があったが、今は必要なケアは抵抗なく受け入れるようになった。

 訪問すると「あっ」と笑顔で応え親指と人差し指で○を作って「OKよ」と合図するのが習慣となっている。握手をすると「ありがとう。十分に生きましたわ、お迎えが来るのを待っているだけよ」とほほ笑む。その穏やかな表情からやがて来る「死」を受け入れている姿勢に毎回感動している。

 一人暮らしだったFさん(99歳・女性)は3年前に自宅で転倒し両大腿骨頸部骨折をして入院した。入院先の病院から施設に直接入所となった。車椅子の生活になったがご自分で生活プログラムを作り、それに沿って生活をしていた。控えめな方だったが一度幼いころから青春時代のころまでの話をしてくれたことがあった。

 その後訪問すると「その節は話を聴いて下さってありがとうございました」という言葉が必ず戻ってきた。入居前から食が細く痩せていたようだが、「最近は直ぐに疲れますのよ」と弱弱しく訴え臥床の生活が多くなってきた。唯一お花を見るのが楽しみということで、スタッフが室内に花を切らさないように飾っている。また、屋上の花壇にスタッフに案内してもらい花々を眺めるのを楽しみにしている。

 最近の施設には90歳から100歳を超える方が多くなってきている。高齢になればなるほど、身内の人も高齢になる。また、子供が病気になったり、時には先立たれたりしてしまう。

 ひとり一人の入居者が今日一日、ひと時をその人らしく過ごせるように寄り添いたいと煩雑な業務の中でスタッフは細やかな配慮をしている。十分でないと思いながらも・・・