ひと言集

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平成26年8月18日

8月のことば

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「もしも帳」

 最近認知症の家族の会で「もしも帳」を書くことを勧めている。ことに高齢ご夫婦のどちらかが認知症の介護にあたっている場合、子供たちに心配をかけまいという配慮から一人で抱え込んでいることがある。

 A氏は重度の認知症の妻の介護を一人で続けていた。息子と娘はそれぞれ所帯を持っていて二人とも仕事が忙しく気にはかけていたが、母親のことは父任せにしていた。
 ある日A氏が心筋梗塞で急死した。子どもたちにとっては予期しない出来事だった。葬儀など初めての体験で認知症の母親への気遣いが出来なかった。母親は特に混乱もなく別室で穏やかに過ごしていた。葬儀の後片付けが終わったとき、母親の様子がおかしいことに気づき救急車で病院に連れて行った。熱中症で意識を失っていた。治療に時間がかかったが一命は取り留めることが出来た。
 元来おとなしい母親だった。認知症であることは父から聞かされていたが、重度であるということは知らなかったし、どのように対応すればよいのかも分からなかった。ともかく葬儀のことで気が回らなかったという。

 B氏は認知症の妻と二人暮らしだった。子どもはなく結婚当初から二人で力を合わせて商売をしてきた。B氏は苦労をかけた妻を最後まで介護する覚悟をしていた。介護保険は受けたがデイサービスなど一切使うことを拒み一人で介護を続けていた。
 あるときB氏が自宅で倒れているところを訪ねてきた友人が見つけ救急車で病院へ運んだ。妻は急遽老人病院へ入院となった。B氏は3か月後に退院になったが左半身に麻痺が残った。
 家族の会でB氏が語った「自分が倒れるなど全く考えたことがなかった。人生何が起こるか分からない。一人で頑張らないでケアマネージャーの言うことに耳を傾けるべきだった」と。

 人生には3つの坂があると言われている。上り坂、下り坂、そして「まさか」である。その「まさか」のために介護は一人で抱え込まないこと。さらに、「もしも帳」を書いておくことを勧めたい。もしも私が○○になったら。という書き出しで自分に代わって介護してくれる人(家族を含め)宛に必要事項を分かりやすく書いておくことが大切である。