ひと言集

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平成26年12月16日

12月のことば

2014年12月の画像

「Cさんがほほ笑んだ」

 一人暮らしをしていたCさん(85歳、女性)が自宅で転倒し両大腿骨頸部骨折をした。入院治療後は自宅での一人暮らしは難しくなりA施設に入居した。Cさんは、身長157センチ、体重39キログラムと痩せていた。両大腿部の熱感を訴えた。食事は車椅子でダイニングで召し上がった。骨折前から小食だったというがスタッフの励ましで時間をかけてほんの少し召し上がる。食事が済むと再びベッドに戻っていたが全身に痛みがあったため、いつも苦渋に満ちた表情をしていた。

 訪問して趣味の話になったとき、編み物が大好きだったともらした。手の込んだ美しい模様のセータや肩掛けがあった。「また、編み物ができるようになるといいですね」と話すと「もうだめだわ」と小さな声が戻ってきた。

 久しぶりにA施設を訪問した。食事の時間はすでに過ぎていたがCさんはダイニングテーブルの前に座っていた。隣りにいた入居者が話しかけても返事をしない。疲れている様子だ。
 忙しそうに動いているスタッフを目で追っていた。「あのー」と蚊の鳴くような声でスタッフを呼んだ。スタッフにその声は届かなかった。ダイニングから出て行ったスタッフが戻ってきた。「あのー」と再度スタッフを呼んだ。スタッフが気づきCさんのところに来た。Cさんの椅子の位置を変えて向き合い、Cさんに優しく声をかけてCさんの腰に手を回し、ゆっくりと2人で立ち上がった。私はあわてて近くにあった車椅子に手をかけた。「あ、それはいいです」とスタッフ。2人は抱き合った同じ姿勢で約2分、そしてゆっくりとCさんを椅子に戻した。「座っているとお尻に圧が加わるので、時折圧を抜いています」とスタッフが私に説明し「ね」とCさんに向かって声をかけた。 
 Cさんがほほ笑んだ。

 病院や施設で車椅子に掛けた高齢者が「疲れたから寝たい」と訴えた時「もう少し待ってね」「まだ時間になっていませんよ」などとスタッフの言葉が戻ってくる。

 今日はA施設で素晴らしいスタッフに出会った。そしてほんとうの個別ケアを見た「いい日だった」何よりもCさんのほほ笑みに出会えて嬉かった。