ひと言集

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平成27年4月27日

4月のことば

2015年3月の画像

「天使にかこまれて」

 「女房を置いて先に死ねない」と言っていたご主人が亡くなって5年が過ぎた。K子さん(94歳)は重度のアルツハイマー型認知症でご主人が亡くなったことも一切理解できていない。言葉による交流はできない状態だが、元教師だったというK子さんは穏やかな方で、目覚めているときはいつもにこやかである。唱歌が好きで他の入居者と一緒に歌う。歌詞はよく覚えていて歌詞カードを見なくとも最後まで歌えた。

 すべてに介助が必要だが抵抗することはない。食事介助の時もにこやかで抵抗はないが、一口の量が少なくゆっくり召し上がるので1時間以上はかかったが、呑み込みに問題はなかった。
 
 ところが6か月前から食物の呑み込みが悪くなり栄養状態が悪化した。ご家族は胃瘻を作らないで点滴を希望された。2か月後ごく少量のアイスクリームやプリンなどを呑み込むことができるようになった。最近は椅子に掛けて柔らかい食物を召し上がれる。量も増えてきた。

 K子さんを訪問し挨拶をすると優しい笑顔で応えてくれる。きれいに片付いた室内に唱歌が流れている。合わせて歌うとK子さんも一緒に歌う。家具の上にはご主人と娘、孫たちと一緒に写した写真が何枚も飾ってある。

 ベッドサイドの壁にはB5大の画用紙に描いた天使の絵を中心に左右にハガキ大の天使の絵が一面に飾ってある。この絵はK子さんの状態が悪くなった6か月前には鉛筆描きのものが何枚かだったが、訪問する度に増えて今は色鉛筆で美しく塗られている。娘や孫たちの描いたものである。

 間もなく旅立つK子さんへのご家族の思いが込められている天使の絵に囲まれたK子さんは、一人で旅立つ不安も寂しさも感じることはない。今日もにこやかに過ごしている。