ひと言集

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平成27年7月16日

7月のことば

2015年7月の画像

「最高の褒め言葉」

 地方で一人暮らしをしていたKさん(88歳、女性)は、病気で入院していたが自宅に戻らず子どもの居住地にある施設に入所してきた。「もう一人暮らしは無理」という思いがあるのか不満も漏らさず衰えた体力を取り戻そうと、リハビリに取り組んでいた。
訪問すると「料理も掃除も何もしない生活は退屈で耐えられない」とこぼした。他者との交流を好まないKさんは三度の食事と早朝に廊下を何回か往復する以外は、ほとんど自室で過ごしていた。手仕事が好きだというが、家族にどんな材料を頼んだらよいのか分からないという。
 
 身近にある布や毛糸で小物を作りたいとかねがね思っていたが、不器用で何一つ作れない私。身の回りにある名刺のケースもイヤリングなどを入れる可愛い袋も器用な友人が作ってくれた物ばかりである。

 仕舞ってあった材料を「これを利用してほしい」とKさんに差し出すと「あら、わたし縫い針と糸、それに毛糸の編み針を何故か持ってきていたのよね」と目を輝かせた。

 布や毛糸、その他手芸の材料はかなりある。いつか作ろうと思って溜め込んでおいた物ばかりである。結局何も作れないで一生が終わるだろう。作りたいと思っても何もできない自分に気づき、久々に気分が落ち込んでしまった。

 あるとき、20歳以上も年下のある看護部長に「私はセンスがないのよ、何やってもダメ、手先のことはできないし、おしゃれのセンスもないし・・・」とこぼした。じっと話を聞いていた彼女に「看護のセンスは抜群よ、大丈夫」と言ってもらった。嬉しかった。単純な私はその一言で、落ち込みから這い上がることができた。ありがとう。

 世の中には何でも器用にこなす素敵な人がいる。羨ましいと思うこともある。
仕事以外のことは何もできない私、それは私の個性だと思えば受け入れられる。
今までもそうだったように、これからも今の自分でよい。前を向いて行こう。

 数日後、30数年お会いしなかったA氏とお目にかかった。強い信念の持ち主で苦労を重ね成功した方である。積もる話をした後、正面から私を見据えていたA氏が「あなたは目力がありますね」とおっしゃった。驚いた。嬉しかった。

 90歳を目前に、ある時は老いを否定し、ある時は年か?と思ったりするこの頃である。なんという褒め言葉だろう。元気をもらった。ありがとう。