ひと言集

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平成27年8月19日

8月のことば

2015年8月の画像

「イライラする私が許せない」

 久しぶりに電話をしたら「あら、○○さん」と弾む声が戻ってきた。在宅で長いことご主人の介護をしていたBさん(81歳)
話によると介護疲れで体重は30キロ台にまで痩せてしまい、近所に暮らす娘にも担当のケアマネージャーにも介護しているBさんの方が病気だと言われていたという。

 ご主人の体調が悪化したので3日前に入院したが、面会に行くと気になることばかりで体が休まらないから面会に行かないで家で休むように言われた。今は昼も夜も眠ってばかりいるということだった。

 「私は長いこと介護の仕事をしてきたし、介護は好きだけれど主人のこととなると違うのよね」と言う。ご主人の病気を悪化させないようにと食事や生活面のことを工夫した。なにかとアドバイスしても聞き入れてくれず、時には言い合いになってしまうこともあってイライラが続き精神的に参り、身体の方も弱って気力も失せてしまったという。「老人介護には自信があったのに、どうして主人に優しくできないのかと思うと情けなくてね」と付け加えた。

 在宅サービスを受け入れることも人には言えるが、いざ、自分の家に訪問してもらうことを考えただけで拒否反応が出てしまい、やっとの思いで往診医と訪問看護に入ってもらっていたという。ご主人は絶対に行かないと言っていたデイサービスにも行くようになったが、私の心身の疲れは少しも回復しなかったとBさんは語った。

 認知症治療専門病院の看護師Sさん(50歳、女性)は、いつもにこやかで認知症の人へのケアも優れていた。
久しぶりに面接をした。「仕事には慣れましたが、私、時々イライラするんです。この職場には向かないでしょうか?」とためらいながら話した。
「イライラする自分は看護師として駄目だと思うの?」
「はい」
「私たちケアする側も感情がある人間よ。家庭や他の施設でケアが難しくなった認知症の人達の集まりですから、イライラすることがあっても不思議ではないと思いますよ。ただし私たちは専門職だからイライラしても爆発することはしない。周囲の人をイライラさせる原因は何か多角的にアセスメントして解決の方向にもっていきますよね」Sさんは深く頷いた。
「話を聴いてもらってほっとしました」とその後もSさんは変わらぬ笑顔で仕事に励んでいる。

 家族も介護に悩み疲れ優しくケアできない自分を責めてしまうが、組織の中で働いている看護・介護の人達もやさしい笑顔の陰で自分を責めている人もいることに注目したいと思った。