ひと言集

文字サイズ:

画像の説明

平成27年10月21日

10月のことば

2015年10月の画像

「熱中できることがあるといいね」

 入居して2か月目に入ったアルツハイマー型認知症のK子さん(82歳)は目覚めている間中トイレに行きたいと訴えた。「今行って来たばかりですよ」と話しても聞き入れないばかりか、スタッフが近づくとつねったり殴ったりした。

 車椅子から立ち上がって歩こうとするが、ふらつきがあって転倒しそうになるので、訴えのあるたびにトイレに誘導した。1回の尿量は少なく時には出ないこともあった。食事は一人で食べることができた。排泄の訴え以外の場面では機嫌がよく笑顔も見られた。日中眠ることがなかった。息子が持って来た「ぬり絵」を気に入っているようでぬり絵をしているときはトイレの訴えは少なかった。

 夜間は3時間毎くらいにセンサーが作動するのでトイレに誘導した。泌尿器科を受診したが器質性の疾患は否定された。

 スタッフからの相談は日中の排泄への対応をどうしたらよいかということだった。

 K子さんのトイレに行きたいという訴えには、もらしたら大変だ、恥ずかしいなどという不安があってのことだろう。K子さんにとっては絶対に曲げられない欲求なのだ。欲求が満たされないことで暴力をふるう。排泄のこと以外は機嫌が良いのだから、トイレに行きたいという欲求を満たすことがケアだと思う。

 寸前のことを忘れてしまうK子さんと排泄のことについて話し合うことや「膀胱訓練」を指導することは難しい。
 先ず24時間排泄の訴えがあってトイレに誘導した時間を記録すること。ぬり絵をしている時は、排泄の訴えがない、または少ないようなので、訴えのない時間は何をしていたか記録する。また、家族と相談をしてぬり絵の他にもK子さんの得意だったこと、できることの情報を得て、日中できることを楽しんで出来るようにする。たとえば、よく面会に来る可愛い息子のマフラーを編んでもらうなど・・・また、フロアのアクティビティへの誘導など興味のあることへの誘導支援を集中的に行ってみることになった。

 ある家族会で、77歳の妻の介護をしている80歳の夫が「女房がデイサービスから戻ってきて、こちらが夕食の支度をしていると、手伝うつもりかいろいろやってくれるけれど中途半端で頭にきて怒鳴ってしまう。すると、家から出て行ったりして、もう大変でしたよ。ところが前回“もやしの根をとる“仕事を頼むと良いということを聞いたので、頼んだら成功しましたよ。女房は一生懸命丁寧に根を取ってくれるし、根がないときれいだし美味しい。これは効果がありましたね」と報告してくれた。

 施設でも在宅でも個人にあった仕事やあそびを探して、やってもらうことは大切なことだとわかっているが、何ができるのか、ことに一人でできるかなどということを思うと面倒になってしまう。何もすることがないと周囲が理解できないような行動をとることがある。認知症の程度に合わせ、また個人の好みに合った仕事や遊びを探して一日中何もしないで過ごすことがないように支援できたら素晴らしいと思った。