ひと言集

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平成28年3月31日

4月のことば

2016年4月の画像

「花」

 今年も「桜」の季節がやってきました。一年を通して様々な花が咲きますが、「桜」には誰にとっても様々な思いがあるようです。高齢者は「今年も桜の花を見ることができた」とよく言いますが、その言葉の裏には「これが最後の花見になるだろう」という思いがあるのでしょう。

 施設で働くスタッフは多忙な日常業務の中でも高齢者に花見の機会を作っています。多忙な業務といえば、どこの施設も入居者の重度化に対してケアやその他の業務量にスタッフは追われる毎日です。
 ある日、就職2年目のケアスタッフB青年がAさんのケアのことで相談にきました。

 Aさん(96歳・女性)は5年前に入居しました。長年教師をしていたAさんは定年後施設のボランティアとして「古典の会」を作り利用者と楽しんでいました。また、歌の時間はピアノ伴奏を担当していました。80代の後半になって一人暮らしだったAさんが自宅で転倒して骨折しデイサービスの利用者になりました。
 デイサービスの場でもボランティアの時と同じく活動を続けていましたが、5年前に一人暮らしが難しくなり入居となりました。自立歩行が困難になり車椅子を利用するようになりましたが、「古典の会」と歌の伴奏は続けていました。そんなAさんを入居者もスタッフも尊敬していました。

 ところが1年前に肺炎で入院をした後急激に体力が低下し、以前からあった難聴も進行しました。Aさんはベッド上で眠っていることが多くなり好きな読書もしなくなりました。それでも目覚めている時声をかけると笑顔で両手を合わせ「ありがとう」と表現しました。時には親指と人差し指で○を作り「OKよ」と返してくれることもありました。
 食事のときはチルド式車椅子に移しダイニングで過ごしますが、食事量も少なくなり、高カロリー食で補うようになりました。
 お元気だった頃「もう充分に生きたからいつ仏様の所に行ってもいいのよ」と言っていたAさん。今はケアをされるまま静かに仏さまのお呼びを待っているように窺えます。

 一時期身体面のケアに抵抗したAさんでしたが今はすべて受け入れているし、ケアに対して「ありがとう」と言ってくれます。難聴のこともあってスタッフとのコミュニケーションは少なくなってきました。
 相談内容は、このままでよいのか、自分たちはAさんに何かケアできることはないか悩んでいるということでした。

 Aさんを訪問したときスタッフは床にひざまづいて、Aさんの耳元で必要な情報を与えています。目は見えるので筆談でもよいが時間がかかると言います。体力がないので時折短時間ピアノの前に座らせ支えていると、入居者の好きな歌を弾き始めることができるAさん。難聴の程度は分からないが耳元での声掛けが聞こえるようなら、Aさんの好みの曲をCDで流し、スタッが訪問しケアを行なう時に曲に合わせて歌うことを勧めました。また、このことはスタッフ全員で話し合い、スタッフ全員でAさんを見守ってほしいと伝えました。
「あ、あ、いいですね。早速実施してみます」と相談者は言って帰りました。
今、季節柄「花」など春の曲が、Aさんの耳元で流されているのではないかと想像しています。

 就職して2年目の青年が入居者のターミナルに向かうその姿勢に感動し大変嬉しく思いました。