ひと言集

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平成28年5月9日

5月のことば

2016年5月の画像

「個別ケアは今どうなっている?」

 97歳のCさん(女性)は、ほぼ寝たきりの状態であり難聴のためコミュニケーションが取りにくい。おむつを使用しているが時折おむつをいじり手が便で汚れるが、おむついじりを防ぐにはどうしたらよいか?と就職2年目のスタッフが相談に来た。1日おきくらいに排便があるという。
 
 「何故おむつをいじる」のか尋ねると、間をおいて「気持ちが悪いからでしょうか?」「そうね。赤ちゃんだったら泣いて訴えるでしょうが、Cさんは自らの手で不快感を取り除こうとしたのでしょうね。時間帯は分かっていますか?」「9時から10時の間くらいです。朝食後9時からおむつ交換を1番室から始めますので、Cさんのところに行くとすでにいじっています」「1番室から始めるのはどうして?」「そう決まっていますので・・・」「Cさんのおむついじりを防ぐ方法は分かりましたね。おむつ交換は順番ではなくCさんに合せた時間にすることで解決に近づくでしょう」「はい、Cさんから始めるようにしてみます」と若いスタッフは目を輝かせた。1人で行うのでなく、カンファレンスの議題にあげて全員で共有しケアすることを勧めた。

 79歳のDさんは施設に入所して3か月目になる。デイルームに1人でいたので「ここに慣れましたか?」と声をかけると「ああ慣れたよ」とほほ笑んだ。
Dさんはアルツハイマー型認知症である。穏やかでとりたてて問題はないが、「ごみ箱に排泄をする習慣がある」という。管理者の話では「入所前の生活は夫と2人暮らしで、若い時から農業をしていたので、ごみ箱にするのを本人は当たり前と思い特に気にかけていないようです」ということだった。

 数分後Dさんの方から「お便所はどこかね」と言った。「一緒に行きましょう」と手をつなぎDさんを誘導した。「ここに慣れた」と言っていたDさんだが廊下を歩きながら周囲を不思議そうに見まわしていた。「Dさんと名前が書いてあるここがDさんのお部屋ですよ」「うん、ここかね?」と不思議そうに見まわして部屋に入った。部屋の奥の障子を開けて「ここがお便所よ」と洋式のトイレを見せたが、理解できないようなので蓋を開けると「ああ、ここが便所かね」と安堵したように衣服を下げて後ろ向きに便器に座り排泄をすることができた。

 一見穏やかに過ごされていたDさんだが、トイレの場所や自宅と違ったトイレに戸惑い、やむなくごみ箱に排泄をしていたのだ。入居後の2か月の間細やかに観察をしていれば、Dさんの見当識障害の程度を把握することができたこと、そのことでDさんに合わせた排泄誘導やトイレの場所の明示、トイレの蓋を常時開けておくなど、Dさんに合わせたケアができたと思う。と管理者に伝えたところ、「若いスタッフが多いので中々気が付かないのと、良い指導者がいないので困っています」という言葉が戻ってきた。この管理者から同じ言葉を何回伺ったことか。