ひと言集

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平成28年8月3日

8月のことば

2016年8月の画像

「変わることって難しい」

 いくつかの「認知症の人の家族の会」に参加しているが、家族の悩みの第一は、介護していて思い通りにならないことが多く、つい声を荒げてしまうということだ。この話題になると「私もそうよ、ああまた言ってしまったと後悔することもあります」「病気だと分かっているのに、もう腹が立ってきつい言葉がでてしまうのよ」などなど。そして、このような対応は直ぐ認知症の人に反映し、更に困った行動につながっていくことを家族は承知している。

 何回も家族会に参加している方は、「この会に参加して皆さんと話し合った後は、当分危険でなければ叱らない。注意しない。ときには演技派でいこうなど努力できますが、時間がたつとまた、腹が立ってしまうのよね」と笑う。分かっているのに「自分を変えることができない」自分への嘲笑である。

 家族の方々の気持ちはよく分かる。私自身も職場では冷静に穏やかに相手の話を聴き良い?対応ができるのに、自分の家族からは「冷たい、きつい」などと言われた時代があった。

 認知症の方は自分を変えることができないが、家族が変わることで認知症の方も変わり、関係が良くなるし、困った行動も減少する。結果介護が楽になり、介護者のストレス軽減につながる。家族会に参加される方々はそのことを分かっているが、24時間365日一緒に過ごしていると腹の立つことが多い。

 施設や病院で働いているスタッフも悩んでいる。仕事に就いた当初は高齢者に優しく、その人に合わせたケアをしたいと理想を抱いていたが、いざ仕事に入ると多忙な業務に追われ初心はどこかに置き去りになってしまいがちである。

 就職2年目のDスタッフが今年就職したスタッフを連れて相談に来た。

 いくつもの慢性疾患のある92歳のCさんは左半身に麻痺がある。歩行器を使用していたが転倒が増えてきたので、すべての行動を見守り必要時介助している。最近はもの忘れすることが多くなり、言うことと行動にずれが増えてきた。腰痛があるため食事が済むと直ぐに臥床を希望する。臥床させると頻回にナースコールを押す。訪問すると、呼んでいないということが度々ある。ことに夜間帯はスタッフが少なく重度の入居者も多いので、Cさんに呼ばれるとイラツキきつい言葉が出てしまう、そんな自分が情けなくてどうしたらよいでしょう。ということだった。

 忙しいとどうしても業務優先になってしまう。もの忘れのあるCさんはスタッフに来てほしかったのでナースコールを押した。でもスタッフが訪問した時は何で呼んだのか忘れている。Cさんが思いついた時とスタッフが訪問した時、そこには時間差がある。Cさんの言動に差があるのは記憶障害があるためだということを理解して対応の方法を変えていくことが必要である。「用事がないときは呼ばないでください!」ではなく「あらそうでしたか、またお伺いいたしますね」と笑顔で返せたらCさんは安心すると思う。眠れない夜は身寄りのないCさんにとって寂しい時間帯であることも理解してほしい。

 優しい人になるにはDさん自身が変わること。施設で暮らす高齢者はそれぞれ心身に疾患があるが、感情面は保たれている。また生きてきた生活習慣や環境なども異なる、個々の高齢者を理解して個人に合わせた対応ができるようになる。きつい言葉は相手を威圧しマイナスな感情を与えてしまう。常に優しい言葉かけ、しぐさが身に付くようになることがDさんの課題である。好んで選んだこの仕事に就いて2年目で気付いたことは良かった。自分を変えることができたら仕事が楽しくなり、ストレスも軽減される。難しいことだけれど挑戦してみますか?と言うと、「はい」と2人で頷いた。また会うことを約束して別れた。