ひと言集

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平成28年10月5日

10月のことば

2016年10月の画像

「介護家族への理解」

 認知症の人を在宅で介護していく中で、まずデイサービスの利用を勧めるが、ご本人はデイサービスに行くことが理解できない。新しい環境、知らない人々との出会い、居心地が良いはずはない。当然「家に帰る」と言い落ち着かない。施設によっては新しい環境に慣れて友人もできるように時間をかけて働きかけを行っているが、中にはデイサービスに合わないからと断ってくる施設がある。

 仕事を持つ娘と二人暮らしのAさん(89歳)は2か所のデイサービスを断られて3か所目のデイサービスに通い始めた。大声を上げたりするわけではないが、お金のこと、家のことが心配で同じことを繰り返し訴え、不安気で落ち着かず施設内を歩き廻るので、常にスタッフの優しい見守り、安心を与える言葉かけが必要だ。

 経験豊かなスタッフはAさんのような方には慣れている。なじみの関係づくりができてここは安心できる場所、なんとなく見慣れた空間と人々、あたたかい飲み物、Aさんの話に耳を傾けてくれる。否定しない。叱られない。家族に「あそこ(デイサービス)へは行きたくない」と言っても、顔なじみのスタッフが迎えに行けば、取り繕って迎えのバスに乗ってくれる。そうしたことの繰り返しの中で、他の利用者との関係もできるようになっていく。経験豊かなスタッフは焦らない。じっくりとAさんが新しい環境に慣れるのを待つことができる。

 在宅介護を長年続けていた若年認知症のB氏は、かなり重度でコミュニケーションがほとんど取れない。排泄の失敗時混乱して家族介護が大変になってきた。
体力があるので在宅介護の限界と言われ、主治医の勧めで認知症治療病院に入院を申し込んだが、心疾患があるということで入院を断られた。ケアマネを通してもいくつかの施設に申し込んだが断られ、1か所だけ受け入れてくれる施設があってやっと入居できた。という報告があった。

 超高齢化に伴って認知症の人の数も増えている。長く地域で暮らせるようにと地域住民の認知症に対する理解も進められている。介護離職をしない社会になどと言う政治家もいるがまだまだ「絵に描いた餅」在宅で頑張れるだけ頑張ってきて、在宅介護は限界だと主治医や家族会のメンバーが勧めても入れる病院や施設が限られているのが現状だ。高齢になれば身体疾患を合併しているのは当たり前である。重度の身体疾患でなければ入院を断るのは納得できない。
勿論すべての認知症治療病院が入院を断るということはない。現にS県の認知症治療病院は、認知症による生活障害や激しい行動・心理症状などにより在宅介護が困難になった場合、病床が空いていれば入院が可能であるし入院予約もできる。入院してから重度のあるいは特殊な身体疾患の治療が必要になった場合は治療病院に移し、治療が終わった段階で戻れるようにしている。

 認知症の人を介護しながら仕事を続けて行くためにはデイサービスを利用するきり方法がない。
 長年の介護で疲労困憊している家族。認知症の人を入院や入所させるということは家族にとって辛いことである。「自分が楽をしたいために」「家族を捨ててしまうような気分」などと訴える。
 認知症の人の介護を長年続けている家族は家族自身が心身とも疲れ果て病気の状態にある。そのことを病院や施設のスタッフに理解してほしいと切に思った。