今月のひと言

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平成29年3月6日

3月のことば

2017年3月の画像

「準備万端」

 家族の中で一番長生きをした母が77歳の初秋に「気分が悪い」と夕食を摂らずに床についた。明け方家族が異変に気づき医師を呼んだがそのまま静かに息を引き取った。

 父は45歳、兄妹たちは70歳前後で旅立っているので、母は長生きしたことになる。私は仕事柄多くの人の旅立ちに出会ってきたが、自分の旅立ちについて真剣に考えたことがなかった。しかし母の年齢に近づいた頃はふと不安を感じる日もあった。ところが母の年を越えた頃から不思議なくらい安堵感に包まれた「ああ、もうこれでいつお迎えが来てもよい」と思うと、すごく自由な気分になって不安やストレスが消えていった。

 間もなく90歳を迎える今、自分の中で変化が起きているのに気付いた。今までの人生、親、兄妹、多く友人や尊敬した方々の影響を受けてきたが、人生の節目は自分で決断してきた。そろそろ旅立ちの準備(決断)をしようと思った。

 ①「もしも帳」は10年前から書いて誕生日ごとに一部訂正してきた。これは私が認知症や意識障害などになって家族に意思表示ができなくなった時のことを想定して、必要なこと、希望すること、感謝の言葉など箇条書きに記載した。「もしも帳」のことを息子に伝えても、聞いているのかいないのか定かでないので、信頼できる嫁にこちらの思いを話し、置き場所を伝えた。

 ②「事前指示書」(病気の状態によっては、してほしくない治療・処置)を書き息子の同意を求め署名をもらおうとしたら、息子は一瞬戸惑った様子だった。「これは私の生き方だからお願い」と言うと「分かった」と言ったが戸惑いの表情は消えなかった。

 ③「検体申請」3年ほど前に知人の母親が96歳で娘の目の前で穏やかに旅立った。「母は検体を申し込んでいたので、すぐ病院から迎えに来てもらったのよ」という連絡があった。私も以前から検体の申し込みを考えていたのになかなか実行に移さなかった。この機を逸してはならないと思い立ち、検体の申し込みの手続きをすることになった。申請書には3人の保証人の署名が必要だった。

 後日、息子に署名を求めると、一瞬「え?」という表情になった。間をおいて「急に言われても・・・」と黙ってしまった。「何でも勝手に決めてご免なさいね」と謝ると「分かった」と言って署名してくれた。そのやり取りを近くで聞いていた中3の孫が「僕の担任の先生も検体をすると言っていたよ」と口添えをしてくれた。
 孫は今の担任の先生を小学校・中学校を通して最も尊敬していた。何か味方を得たようで嬉しかった。

 これで「準備万端」さあこれからは今まで以上に今日一日を前向きに楽しく生きて行こう。そして今日の終わりに「頑張ったね、いい子だったね」と「はなまる」を付けようと思った。