今月のひと言

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平成29年10月4日

10月のことば

2017年10月の画像

「幸せだった日々を」

 毎週行っているスクエアダンスの会場の隣りにケアプラザがある。そこでは高齢者のデイサービスが行なわれている。デイサービスの年間行事である夏祭りや花見などの際にボランティアの募集がありダンスの仲間が参加している。
 
 今回はスクエアダンスを利用者の方々に披露してほしいという要望があった。コーラーを入れて9人が応募した。なるべく派手で可愛いコスチュームを着ることが参加の条件だった。赤い地一面に白い菊の花を散らしたもの、白地に大きなブルーの星と黄色い小さな星、ピンク一色、モスグリーンに黄色と茶色のシックな模様などなど。私は沖縄で買い求めた黄色の紅型模様の衣装を着た。目を見張るような派手な一群が2人ずつ手をつないで会場に入って行った。

 コーラーの指示に従って歩くだけなので難しくないという説明の後、ダンサーは笑顔で一曲踊った。コーラーが高齢者を誘った。ダンサーが高齢者に手を差しのべると、尻込みしていた高齢者の中から、1人2人と参加者が出た。1人を除いて皆女性だった。男性はシャイなのか、女性が積極的なのか?

 片隅に車椅子の女性がいた。70代の初め位の年頃でふっくらとした品のよい女性。右半身に麻痺があった。膝の上にティッシュペーパーの箱を置いていた。涎を拭くためか?「車椅子でも踊れますのよ」と近づいて声をかけると、首を横に振った。スタッフがティッシュの箱を取り「参加してみましょう」と声をかけ車椅子を踊りの輪に入れた。車椅子の脇に立ち左手の上に彼女の左手をのせ、右手を車椅子の脇にかけ、スタッフが車椅子を押した。コーラーの指示に従って、左へ、右へと歩き、円の中央へ集まったときは「ヘイ、ヘイ」とかけ声をあげた。参加した高齢者のほとんどは足元がおぼつかない状態だった。それでもスタッフやダンサーに左右を支えられて踊り笑顔が溢れた。

 車椅子の女性を定位置に戻した時、左中指の大きな石の指輪をほめたら、優しい笑顔が戻ってきた。最後に誰もが知っている歌を一緒に歌いながら会場一体となって踊った。

 お別れの時が来た。皆さんと握手をして「お大事にね」と言うと満面の笑顔が戻ってきた。「昔踊ったことあるのよ、私は男役でね」という女性もいた。車椅子の女性の左手を両手で包み「思うようにいかないお身体、辛いですね」と声をかけると、強く握り返しながら涙を流した。後で彼女は日本舞踊の師匠だったとスタッフから聞いた。

 誰もが高齢になって病気や障害のためにケアを受ける立場になる。その時に思い出してほしい。長い人生には色々な出来事があった。辛いこと、悲しいこと。しかし、元気で仕事や趣味活動を楽しんだ日々もあっと思う「幸せだった日々を」一人で何回も思い出すのもよい。家族や友人とそのことを語り合うのもよい。きっと幸せな気分になれると思う。