今月のひと言

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2019年4月10日

4月のことば

2019年4月の画像

「体験学習」

 高齢になるとともに体のあちこちに故障が起きてくる。その中には生活に支障をきたすものもある。10数年前から右目の黄斑変性症を患っている。正常な左目で何の不自由も感じず生活をしていたので発見が遅れた。現在も進行を遅らせるための治療を続けているが、右目ではすべてのものを正しく見ることができない。

 最近左目の眼瞼下垂が始まり朝目覚めた時、瞼を指で上げなければ開かないようになってきた。頼りにしている左目は少しでも良い状態を保っておく必要があると思い、眼瞼下垂を改善するための手術を行うことにした。心配なのは術後左目に眼帯をしたら右目だけで歩けるかということだった。友人に話したら「付き添ってくれる」と言ってくれたが、慣れた道だし十分に気を付けて帰るからとお断りをした。目がよく見えないという状況を体験するという興味もあった。

 眼科はデパートの4階に在った。手術が終わり電車に乗る前にトイレに行こうと思いトイレを探したが左目は眼帯をし、右目は上半分が全く見えないためトイレの標識が見つからない。うろうろと行き来していたら、職員らしい女性が「何かお探しですか?」と声をかけてくれた。「この先、左に行って突き当りを右に行くと右側にあります」と教えてくれた。急に方向音痴になった感じだった。

 JRから私鉄に乗り換えるとき、曲がり角を一つ間違えてしまった。まあ何とかなるだろうと思って、長い階段を下りようとした。生憎左側の手すりには白い杖を手にした高齢者が、付き添の人に口うるさく注意されながら階段を下りていたので、広い階段の真ん中にある手すりにつかまって下りはじめた。昼時を過ぎた時間帯のため階段を上り下りする人は少なかった。階段の真ん中にある手すりは途中で切れていた。2歩位離れて手すりが付いていることに初めて気づいた。ほんの2歩、目の不自由な者にとってそれは大きな不安だった。

 慎重に階段を下りたが、左に行くのか右に行くのか迷った。標識はどれも高くに付いていて見えない。通りかかった女性に尋ねたら「右に行くと間もなく左に階段がありますから、そこを下りると改札口があります」と教えてくれた。
エスカレータに乗ればよいが、右目に写ったエスカレータは黄色いラインがくねくねと曲がって動いていて多分足を踏み込むことが難しいと思った。

 無事に私鉄に乗り換えることができた。もう一度乗り換えがあったが、そこはよく慣れた駅なので無事に通過することができた。

 心身面、生活行動面などなど何事も自分で体験してはじめてある程度わかる。貴重な体験学習だった。