今月のひと言

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平成30年11月7日

11月のことば

2018年11月の画像

「紐付き生活」

 「ない?ない?」夢中でリュックサックの中をかきまぜ、中にあるものを全部出してみたが、ない。スマホがない。入れるはずのないポケットの中にもない?頭の中が真っ白。「スマホを失くしたら大変でしょう。最後に写真を撮ったところまで探しながら行ってみましょう」と友人に言われ、我に返った。

 この日はどこまでも晴れ渡った空、涼やかな秋風が吹きぬける最高の行楽日和だった。ウイークデーということもあってか、広い公園は人もまばらだった。乗り降り自由の1日乗車券を手に、ポッポ電車に乗って上機嫌。広場で下車して、崎陽軒の「秋御膳」をゆっくりといただき、再びポッポ電車に乗った。秋海棠(シュウカイドウ)は咲いていたが、コスモスの時期は過ぎて刈られていた。次はどこで降りようかと思っていたら、コスモスの一群が目に入った。残っていた。あそこで降りよう。

 コスモスの周りには人が集まってしきりと写真を撮っていた。私たちもスマホで何枚か写した。ふっと後ろを見上げると、紅葉が始まりかけた見上げるほどの大木があった。大木に木洩れ日が美しいので写真に収めた。

 近くにある日本庭園に向かった。手入れの行き届いた庭園は格別の美しさ。形のよい松の大木、池の周囲には紅葉が始まった楓が水面に影を落としていた。
「写真を撮りましょうか?」と友人に問いかけたら、「いいわ」というので、景色を眺めながら池の淵を回った。あずまやで水面を眺めながら休息をした。時間を見ようと思ってスマホを取り出そうとしたら、なかったのだ。

 最後に写真を撮ったのは大木の木洩れ日だ。友人と2人で最後に写真を撮ったところまで探しに行ったが見つからなかった。呆然としている私を見て友人が公園の事務所に電話を入れてくれた。

 「ごめんね、せっかくの日を台無しにして」と友人に謝ると「謝らなくていいのよ。事務所に届くと思うわ」と慰めてくれた。スマホの中には必要な情報が入っている。スマホはロックしてあるので中の情報が漏れることはないと思ったが、どうしよう。途方に暮れていても仕方がない。来年の3月までの予定は一覧表にしてパソコンに入れてある。なんとかなるわ。そうだ明日事務所に連絡して見つからなかったら新しいのを買うのだ。何とかなると、自分に言い聞かせるように友人に伝えた。秋の日は傾きかけていた。最終便のポッポ電車に乗って出口に向かった。

 出口の職員に事情を話し、事務所から連絡が来ていないか尋ねていた時、日本庭園の中に落ちていたと友人のスマホに連絡が入った。事務所で預かっているので直ぐ取りに来ますか?ということだった。ポッポ電車は終電になっていた。歩いて30分かかるという。困っていたら、事務所の人が巡回の車に届けてもらうが17時半位になるという。友人は即座に「何時まででも待ちます。お願します」と言ってくれた。日暮れのベンチで待っていると巡回の車がやってきた。使い古したスマホを手にし、何回もお礼を言って帰路に着いた。

 どこで落としたのか全く記憶がない。身近で生活用品のひとつとなったスマホを失くすなど思ってもいなかった。自信を失ってしまった。何とか対策をと考え、紐を付けることにした。100円ショップでスパイラルホルダーを3本、ネックストラップを2本求めて、失くしそうなものにとりあえず付けた。スマホ、鍵、財布、なんにでも紐を付けようかな?後はリュックサックを失くさないようにするしかない。