今月のひと言

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2019年9月19日

9月のことば

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「思い通りにいかない」

 B氏(81歳)は明るく働き者の妻(78歳)との生活に満足していたが、3年前の春頃から妻の変化に気づいた。同じことを何回も繰り返し尋ねるようになったことや、夕食の買い物をメモしていたったにもかかわらず、毎回同じものを買ってきた。注意すると「これは体に良いのよ」と言い訳をした。このようなことが続いたので受診したところ、アルツハイマー型認知症と診断された。

 進行を遅らせるための薬を飲みはじめた。B氏は妻の病状が進行しないようにするためにはどうすればよいか必死で情報を集め学び実行した。男の料理教室にも通い、妻と一緒に料理をするようになった。最近は妻がおっくうがるので料理や家事の大半をB氏が行うようになった。妻はB氏の作った料理に毎回「おいしいわ、ありがとう」と言ってくれたが、以前の妻と細かなところが変わってしまった。夫が晩酌をしているのに自分だけ食事を済ませ食器を片付け始めた。以前は食器をお盆に載せて片付けていたのに手で一つ一つ持ち運んだりした。朝起きて何を着たらよいのか迷い時間がかるようになったので、B氏が着る衣服をそろえておくようにしたが、着終わるのに時間がかり、デイサービスの迎えの車を待たせたりした。お化粧もしなくなり人柄が変わってしまった。

 病状の進行を遅らせるために努力しても効果がないことを知りB氏のイライラが募り、心は折れてしまった。

 ある家族会で徘徊のことが話題になった。ある日突然迷子になって一晩帰ってこなかった夫。幸いかなり離れた場所の交番からの連絡で迎えに行ったが、その日は眠れず辛かった。と話した。すると、先輩家族たちが、徘徊したころの大変だったことを次々と話した。まだまだ軽度な家族が「今まで留守番ができていた夫が先日買い物から帰宅したら、玄関先にいたので驚いてしまった。ポチポチ始まるかしら」と笑顔で話した。

 現代は情報があふれている。参考になることも多いが、その時の病状や環境、個人によって異なる。現実の生活の中で予期しない出来事が起こり、介護者の「思い通りにいかない」ことが多くなる。「認知症の人に合わせる」ことは難しいし、根気がいる。

 家族会で介護経験者や現在介護中の人たちがさまざまな体験や思いを話し合い、支えあっていくことが、介護家族にとって大切なことであると改めて思った。