今月のひと言

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平成30年12月12日

12月のことば

2018年12月の画像

「心が折れる」

 午前中の講義が終わり、午後の講義が始まる前に、数人のグループで20分ほど話し合いを持ち、現在介護の場で一番困っていることを話し合ってもらい、全員で解決の方向性を考える時間を持っている。

 激しい帰宅欲求が収まらない・ベランダを歩き廻り目が離せない・食事のとき他の入居者の食物まで食べてしまい目が離せない・衣類へのこだわりが強く他者の衣類を集めてトラブルになる・介護への抵抗(入浴・食事・着替え・在宅訪問の方で洗濯物が山ほどあるのに洗わせない)・気分の変動(理由が分からないが急に泣き出し長時間泣き止まない)などなど、出される課題はほぼ決まっていたが、今回「同性介護が難しい」という話題があがった。

 施設に入所して2年目のSさん(82歳の女性・認知症はない?)「女性介護者全員に対して暴言が激しい。すべてのケア・言葉かけに対してガミガミと説教されるので、心が折れてしまう」という。「好きで介護の仕事を続けて10年余になりますが、もう辛い」と続けた。男性介護者に対しては、女性介護者程ではないが、いつも男性介護者がいるとは限らないし、夜勤の時など耐えられないという。施設長(男性)が話してもその時は「分かった」というが一向に変わらない。小さな町なので、Sさんは近所でも名の知れた嫁イジメだったという情報はあるが、スタッフの我慢は限界にきているという。

 研修生の中から「Sさんほどではないが、時折そのような方はいる」と共感の声が上がったが、良い対策は出なかった。無視もできないし、話し合いのできる状況ではない。相手は虚弱な高齢者で、入居しているお客さま。Sさんの性格を直すことなど無理である。Sさんの話し(不満)を充分聞く。親しくなり過ぎない。事務的な対応?など幾つかの対応策は出たが、意見を出した研修生は納得した様子ではなかった。

 同じではないがこのような例はたくさんある。ある施設では入居の長い女性(認知症はない)が「今度来た主任、あれはだめよ、教育なんてできない。私は今までも新入職員を全部教育してきたのよ。見てごらんなさい。若い子はみんな私の処に挨拶に来るでしょう」と自慢気に訪問する度に聞かされた。また他の入居者はスタッフの些細な言動に対してひどく怒り、時には「訴えてやる。裁判になればこちらが勝つに決まっている」などと折あるごとにスタッフやその上司を呼び、長時間攻め立てた。また、訪問先で女性高齢者がケア中特に入浴介助の際に聞くに堪えないような卑猥なことをいうので、訪問が辛いと訴えた女性スタッフがいた。この時は2人で訪問しケアするように話したが、人手不足で難しいということだった。女性入居者ばかりではない。男性入居者の中にもケアが難しい方はいる。スタッフは原因を探り対応の方法など考えるが、認知症のない方がむしろ多いようである。

 スタッフが高齢者に適切なケアをしなかった。不注意?で怪我をさせた。あるいは虐待をした。などということはしばしば大きな社会問題として取り上げられる。このようなことは、あってはならないことであるが、先に上げたような入居者(利用者)からの必要以上とも思われる攻撃的な言動は、介護の場では多くのスタッフが我慢している。

 介護の仕事を志しているスタッフの多くは謙虚で自分のケアが充分でないという思いから日々努力している。また、介護の現場はスタッフ不足が限界にきている。原因はいろいろあると思うが、若いスタッフが「心が折れて職場に行きたくない」ということが原因の一つになってほしくないと思った。