今月のひと言

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2019年3月11日

3月のことば

2019年3月の画像

「優しさに感謝」

 高齢者がラッシュアワーの時間帯に電車に乗ることに引け目を感じているが、仕事の都合でその時間に電車に乗らなければならないこともある。なるべく乗車口の近くで邪魔にならないように立っていることが多い。

 帰宅時間の都心から郊外に向かって走る電車は身動きできない程の混雑であった。何台待っても混雑は解消されない。各停なら多少よいかなと思ってリュックを前に掛けて一番前で待っていた。電車から何人もの人が降りた後、後ろの人におされる感じで電車の中に入った。手すりや吊革に手の届かないところ、群衆の真ん中で止まった。周囲は身長の高い人ばかりで私は擦り鉢の底にいる感じだった。身動きどころか顔は右横に向いたままつかまるところもない。すると左横にいた男性が「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。「はい大丈夫です」と声をかけてくれた人に返したが、顔を向きかえることもできなかった。声の感じから40歳代位かなと思った。

 身動きできないまま約30分、周りの人達は高い所でスマホをいじっていた。私の顔は前に立っている女性の長い髪で覆われたまま、手も出ない状態なので我慢するしかなかった。「可愛い娘か孫の髪と思えば我慢できるわ」と思ったら苦痛でなくなった。私が降りるひとつ前の駅でやっと解放された。

 数日後やはり帰宅する満員電車に乗った。この時は出入口に立てたので窓の外を見ていた。すると2つ向こうの席に座っていた40歳代位の男性が「どうぞお掛け下さい」と声をかけ手招きをした。みんなスマホに目をやっているが、この方は私が乗るのを見ていたのかしら「恐れ入ります」と周りの人をかき分けて座席に座らせていただいた。

 以前なら「直ぐ降りますので大丈夫です」などとお断りしていたが、最近は相手の好意に甘えるようにしている。しかし座った後が落ち着かない。その方も疲れているだろうと思うと心苦しかった。私が降りるひとつ前の駅で席が空きその方が座った。「私よりも遠くへ帰られる方だったのだ」と思ったら更に申し訳ない気持ちになった。降りるとき「ありがとうございました」と挨拶をしたら、笑顔で会釈を返してくれた。

 なんて素敵な方だろうと嬉しかった。そして「優しさに感謝」した。