今月のひと言

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2020年6月3日

6月のことば

2020年6月の画像

「転倒」

緑の風が吹き抜ける爽やかな午後、6歳位の女の子がスケボーに乗って近づいてきた。体をくねらせ、両手で、いや全身でバランスを取りながら、短いスカートがひらひらと揺れた。近くの公園にはスケボーで遊ぶ何人かの子供がいた。
新型コロナウイルスの流行で日本中が不要不急の外出自粛といわれて1か月を過ぎた。巣篭り生活で気分が落ち込んでいたが、子供たちのしなやかな体の動きを見ていると気分が晴れた。

最近は友人と別れるとき「さよなら」の前に決まって「お互い転ばないようにしましょうね」というのが習わしのようになっていた。それなのに今年に入って2度も転んでしまった。1回目は公園墓地に友人たちと花見に行ったときのことである。50センチくらいの高さから降りようとして左足を下した。足の短い私でも着くと思ったのが間違いであった。どんと音を立てて左側に倒れ左側頭部を強く打った。通りかかったご夫婦が近づいて「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。咄嗟に「はい、大丈夫です」と言ったが立ち上がるのに時間がかかった。打ったところに触ったら膨らんでいたが出血はなかった。何事もなかったように友人たちのところに戻ったので、誰にも気づかれずに済んだ。翌日脳神経外科を受診して検査を受け問題ないということで一安心した。
 2度目は整形外科受診のため病院に行った。病院は臨時休業だった。入り口の周りの杭に鎖が張り巡らされてあった。玄関に貼ってある休業の理由の文字が小さくて見えなかったので、30センチほどの高さの鎖をまたいで入り、貼り紙に書かれた文字を読み、再度鎖を右足でまたいで道路に出ようとしたら、左足が鎖に引っかかって、どんと音を立てて道路に倒れた。いずれも自分では大丈夫と思っての行動だったのでかなりのショックだった。

自分の加齢に対する自覚がないのは以前からだ。電車の中で席を譲られると「私やっぱり年寄りに見えるのかしら」と思い、病院で受診した時「加齢ですね」と言われると
いつも心の中で憤慨していた。 
子供たちのしなやかな身体の動きを見ていて、「年寄りの冷や水」ということわざを思い出した。そして92歳の自分が高齢であることにやっと気づいた。